大学1年の夏頃に見た夢

久しぶりに地元に帰って来た
実家に行くが誰もいない
もしかしたら祖母の家の方に誰か居るかもしれない
畑を挟んで50mほどの距離に有る、祖母の家に向かう
いかにも夏らしい陽気の日であった
しかし夢の中だからか暑さは感じなかった


祖母の家では10年くらい前に死んだはずの祖父がテレビを見ていた
祖父は畑仕事用の野良着の上から袈裟のようなモノを羽織っていた
家には祖父以外には誰も居ないようだった
祖父は「これから温泉にでも行こうと思うのだが、一緒に行くか?」というようなことを訊いてきた
俺は祖父と一緒に温泉に行くことにした


庭にリムジンの様な長い自動車が停まっていた
祖父はその自動車の運転席に乗った
俺は助手席に乗った
ふと後ろの座席の方を見ると、古い遺影でしか見たことの無い昔のご先祖様たちがズラリと座っていた
祖父は何も言わず車を走らせた
XX地区(山奥の地域)の方に向かっているようだ


気づいたら山奥の古めかしい雰囲気の旅館の前にいた
旅館の向かい側の林の隙間からは湖が僅かに見える
なぜか一緒に来たはずの祖父も先祖もいない
なぜか一緒には来ていないはずの父母弟が、旅館の玄関の中から「早く来い」とでも言いたそうにこちらを見ている
俺は旅館の玄関の中に入って行った


弟と一緒に旅館の中を探検することにした


旅館の中にはとてつもなく長い廊下があった
廊下の片側には宿泊客用の部屋がずっと並んでいた
もう片側は窓がずっと並んでいて外の景色が見える様になっていた
外は木々が鬱蒼と繁っているだけであった
木々に遮られ太陽光もあまり入って来ないため廊下は薄暗かった
さらに廊下は靄がかかった様になっていて、廊下の先の方がどうなっているのか分からなかった
とりあえずこの廊下をずっと進んで行き、先がどうなっているのか確かめに行こうということになった


いつの間にか一緒に廊下を進んでいたはずの弟が居なくなっていた
周りを見渡すと木造旅館の和風な廊下ではなく、煉瓦造りの洋風な廊下になっていた
壁には両側に等間隔でガス灯の様な照明が並んでついていた
さらにその照明よりも広い間隔で木の扉も並んでついていた


ふと誰か他の人の気配を感じた
弟ではない気がする
ずっとこの廊下に居るのは良くない様な気がした
俺は並んでいる扉のうちの一つを開け中に入った


扉の中は3m*5mほどの広さの部屋だった
廊下と同じく煉瓦造りの洋風の部屋だった
暖炉とソファーと何かの機械の残骸と人がちょうど入れるくらいの大きさの木造の箱が有った
木造の箱は棺桶の様に見える
この棺桶の様な箱が一番気になる
棺桶の様な箱に手を触れようとしたところで気を失った


気を失っている間、何か夢の様なものを見ていた気がする(※夢の中の夢)
しかし、その夢の内容についてはほとんど覚えていない
煉瓦でできた工場が出てきた気がする
その工場では気を失った部屋に有った様な機械を作っていた気がする
その夢の中では仲の良かった女の子が居たような気がする
それくらいしか覚えていない


夢の中の夢から覚め、気付いたらソファーで寝ていた
気を失う前と同じ部屋だ
気を失う前と違う所は部屋に女の子が居ることだ
その女の子の顔や服装などについては記憶がかなり朧気である
気を失っていた間に見た夢に出てきた女の子と同一人物の様な気もする
ただし夢の中で出てきた女の子は7,8歳くらいであった様な気がするのに対して、今この部屋にいる女の子は13,14歳くらいである気がする
全体的に存在が淡い様な、今にも消えてしまいそうな感じの女の子であった
ガラスにヒビの入った懐中時計を持っていた様な気がする


その女の子は俺が目覚めたことに気付いた
「やっと目覚めたんだね」という様なことを言われた様な気がする
彼女は懐かしい人に久しぶりに会ったという様な表情をしていた様な気がする
俺もまた彼女とは初対面では無いような気がした
やはりあの夢の中で出てきた女の子であるような気がする


彼女は「こんな薄暗い雰囲気の部屋から出て、一緒に外に遊びに行かない?」という様なことを言ってきた


そのとき、自分の背中側が急に明るくなったような気がした
ふり返ると今までただの壁だったはずの場所に窓がいくつか並んでいた
窓からは太陽光を反射して煌めく湖が見えた


彼女と一緒に湖でボートを漕いでいた
ボートの上で彼女と何か話していたような気がするが、何を話していたのかは覚えていない
時間が経つとともに湖の反射する光が強くなっていっている気がした
光が強くなるほどに彼女の存在が薄くなっていっている様な気がした
彼女の持っていた懐中時計は元々止まっていたような気がしていたがいつの間にか動き始めていた


薄くなっていく彼女の指先の中に骨が見えた
俺が彼女の指先を見つめていることに彼女が気付いた
彼女もまた骨になっていっている指先を見た


彼女は突然俺を湖の中に突き落とした
俺は湖の中に沈んでいった
湖の中から見た彼女は肘の辺りまで骨になっていた
彼女の唇はなにかを言っていた様だったが、何を言っていたのかは聞き取れなかった